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PTSD/複雑性PTSD

PTSD
(心的外傷後ストレス障害)とは

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは
「過去の出来事が忘れられない」「突然、つらい記憶がよみがえる」「理由は分からないのに強い不安を感じる」――このような状態に悩んでいる方は少なくありません。こうした症状の背景には、PTSD(心的外傷後ストレス障害)が関係している可能性があります。

PTSDとは、生命の危険を感じるような強い恐怖や衝撃的な体験(トラウマ)を経験した後に、その記憶や感覚が長期間にわたって心や身体に影響を及ぼす状態を指します。PTSD 原因となる体験はさまざまであり、交通事故、自然災害、暴力被害、虐待、医療処置、いじめなどが含まれます。
この状態は「心が弱いから起こるもの」ではありません。人の脳は危険な出来事から身を守るため、強い体験を記憶し、同様の状況を避けようとする働きを持っています。トラウマ体験の後も脳の警戒システムが過敏なままとなり、安全な環境でも危険に備え続けてしまうことがあります。その結果、フラッシュバックや不安、不眠などのPTSD 症状が生じると考えられています。
そのため、PTSDとは異常な反応ではなく、危険な体験に対する脳と心の自然な防御反応の一つとされています。しかし、この状態が長く続くことで日常生活に影響が出る場合には、精神科や心療内科での適切な評価と支援が回復につながる可能性があります。

PTSDの主な症状

PTSDの症状は大きく4つのカテゴリーに分けられます。現れ方には個人差があり、すべてが当てはまるとは限りません。

フラッシュバック・侵入症状

フラッシュバックとは、過去のトラウマ体験が突然よみがえり、まるで「今、再び起きているかのように」感じられる現象です。
例えば、以下のような体験があります。

  • 事故現場に似た場所を通ったときに、当時の光景が鮮明によみがえる
  • 特定の音や匂いをきっかけに、強い恐怖を感じる
  • 夢の中で何度も同じ体験を繰り返す
  • 思い出したくないのに記憶が浮かんでしまう

このような状態は、本人の意思とは関係なく起こるため、「コントロールできない感覚」に苦しむ方も少なくありません。

回避症状

トラウマを思い出させる状況や場所、人を避ける行動がみられることがあります。

  • 事故現場付近を避けるようになる
  • 当時の出来事について話せなくなる
  • 関連するテレビやニュースを見られない
  • 人との関わりを減らすようになる

回避は一時的に安心感をもたらしますが、長期的には生活範囲の制限や孤立につながる可能性があります。

過覚醒症状

脳が常に警戒状態にあるため、身体も緊張しやすい状態が続きます。

  • 眠りが浅くなる、または眠れない
  • 些細な音に驚きやすい
  • 常に緊張している感覚がある
  • 集中力が低下する
  • イライラしやすくなる

このような状態は、日常生活や仕事、人間関係にも影響を及ぼすことがあります。

気分や認知の変化

トラウマ体験の後、考え方や感情にも変化がみられることがあります。

  • 自分を責める気持ちが強くなる
  • 物事を楽しめなくなる
  • 感情が麻痺したように感じる
  • 周囲を信頼できなくなる
  • 将来に希望を持てなくなる

これらの変化は、本人の性格によるものではなく、トラウマによる脳の反応の一部とされています。

複雑性PTSDとは

複雑性PTSDとは、長期間にわたる繰り返しのトラウマ体験によって生じる、より広範な影響を伴う状態です。近年、ICD-11(国際疾病分類)において正式に定義され、PTSDとは異なる特徴を持つことが明らかになっています。

PTSDが単一の出来事に関連することが多いのに対し、複雑性PTSDは、長期的で逃れることが困難な環境に関連することが多いとされています。
例えば、以下のような環境が含まれます。

  • 幼少期の虐待やネグレクト
  • 家庭内での継続的な心理的圧力
  • 長期間のいじめ
  • DVや支配的な人間関係
  • 慢性的な恐怖や不安の中での生活

このような環境で育った方は、「安心できる」という感覚を十分に経験できなかった可能性があります。そのため、愛着障害やアダルトチルドレンの特徴と関連して語られることもあります。
複雑性PTSDとは、単なる記憶の問題ではなく、感情調整や自己認識、対人関係など、人格の基盤に影響を及ぼす可能性がある状態とされています。

複雑性PTSDの主な症状

複雑性PTSDでは、PTSDの症状に加えて、より広範な影響がみられることがあります。

感情調整の困難

感情のコントロールが難しくなることがあります。

  • 突然強い不安に襲われる
  • 感情の波が激しい
  • 些細なことで強い恐怖や怒りを感じる
  • 感情が麻痺したように感じる

慢性的な不安

明確な理由がなくても、不安や緊張が続くことがあります。

  • 常に安心できない感覚がある
  • リラックスすることが難しい
  • 安全な場所でも警戒してしまう

自己否定感

自己評価が低くなる傾向があります。

  • 「自分には価値がない」と感じる
  • 自分を責める気持ちが強い
  • 人から愛されないと感じる

対人関係の困難

人との関係を築くことに難しさを感じることがあります。

  • 人を信頼することが難しい
  • 親密な関係を避けてしまう
  • 関係が不安定になりやすい

安心感の欠如

「安心できる」という感覚を持ちにくい状態が続くことがあります。
これは、幼少期の環境や愛着形成の過程が関係している可能性があるとされています。

PTSD・複雑性PTSDの原因

PTSD 原因および複雑性PTSD 原因は、強い恐怖や無力感を伴う体験です。 具体的には、以下のような体験が関連する可能性があります。

  • 交通事故や災害
  • 身体的・心理的虐待
  • いじめ
  • DV
  • 医療処置や手術体験
  • 家庭内の慢性的な不安定環境

特に複雑性PTSDでは、幼少期の環境が重要な要因となることがあります。安心して守られる経験が十分でなかった場合、脳のストレス反応システムが過敏な状態のまま発達する可能性があります。

PTSD・複雑性PTSDは回復が可能な状態です

トラウマから回復したいと考えている方にとって、回復の可能性があることは重要なポイントです。
脳には「可塑性」と呼ばれる性質があり、経験によって変化し、回復する力を持っているとされています。適切な支援や安全な環境の中で、脳の過敏な反応が徐々に落ち着いていく可能性があります。
回復には時間がかかることもありますが、適切なPTSD 治療や複雑性PTSD 治療によって、症状の軽減や生活の安定につながることが期待されています。

PTSD・複雑性PTSDの治療方法

PTSD 治療および複雑性PTSD 治療では、個々の状態に応じた方法が選択されます。

精神療法

トラウマ志向認知行動療法(TF-CBT)などの精神療法は、トラウマ体験の影響を整理し、安全な形で向き合うことを支援する方法です。

カウンセリング

複雑性PTSD カウンセリングでは、安心できる関係性の中で、自分の感情や体験を整理していきます。安全な対話の積み重ねが回復の基盤となるとされています。

薬物療法

不安、不眠、抑うつなどの症状に対して、必要に応じて薬物療法が検討されることがあります。

安全な環境の確保

安心できる環境で過ごすことも、回復において重要な要素とされています。

このような症状でお悩みの方はご相談ください

  • 過去の出来事が忘れられない
  • フラッシュバックがある
  • 慢性的な不安や緊張が続いている
  • 人間関係に困難を感じる
  • 安心できる感覚を持てない

このような状態は、PTSDや複雑性PTSDの可能性があります。
これらは適切な評価と支援によって改善につながることが期待される状態です。一人で抱え込まず、精神科や心療内科に相談することで、ご自身の状態を理解し、回復への第一歩につながる可能性があります。
当院では、一人ひとりの状態や背景を丁寧に確認しながら、無理のない形で治療や支援の方針を検討いたします。受診するかどうか迷われている段階でも構いません。つらさを感じている方は、お気軽にご相談ください。